おすすめ度:★★★★★ 強くなりたい!ボクシングを通じた友情&父子の絆を描いた感動作品
Netflixでタイドラマ「Hook / 青春はヘビーパンチ」(2020年)を観ました!ムエタイ(キックボクシング)で有名なタイらしく「ボクシング」をテーマにした青春ドラマ。なんだかダサそうなスポ根ドラマかと思い、いつも後回しにしていましたが、見始めると実はおもしろい!
元世界チャンピオンのボクサーを父に持つマンと、その父が経営するワンチャイ・ジムのスポンサーを父に持つサイファー。2人のボクシングを通した友情に、親子の確執と絆、そして気になる女の子との恋模様も。キャストのみんなも爽やかで、キラキラした青春ドラマ。そしてとてもいい話!
元世界チャンピオンのボクサーを父に持つマン
このドラマの舞台でもある「ワンチャイ・ボクシングジム」は、元世界チャンピオンのボクサー・ワンチャイが経営する未来のプロボクサー養成所。10名弱のボクサーが毎日練習に励んでいる。その中のひとりがワンチャイの息子で大学1年生のマン。芸術学部に通っている。
元世界チャンピオンの父親をとても誇りに思っている一方で、今では酒に飲んだくれる日々を送る父の姿に複雑な思いを抱えている。父親の引退試合に「八百長疑惑」が伝わっていることを知りつつも、そんなことはないと信じている。酒に溺れる父にも、決して敬意を忘れないとても親孝行な息子。
そんなマンを演じているのが、ピーク・ピーマポーン・パーニタムロン(Peak Peemapol Panichtamrong)。最初は非常に地味で普通な印象ですが、シリーズが進むにつれてとてもいい演技をしていることに気づきます!タイドラマ「7 Project / EP6:VS Love」(2021年)では、正義感の強い転校生トンナムを演じています。1エピソードの短いオムニバスドラマですがこちらもおすすめ。
ビジネスで成功した父を持つサイファー
マンと同じ大学の経営学部に通うサイファーは、家がお金持ちでアメリカ帰りのおぼっちゃま。父親のアルンは、マンの実家の「ワンチャイ・ジム」にスポンサーとして何十年も資金サポートを続けている。その父にボクシングと関わることを禁止されているが、大学で久しぶりにマンと再開し、ボクシング熱に火がついてしまい、父に内緒でジムに通い始める。
クラスメイトの女の子ダンダオに片想中。しかし、ダンダオにはボクサーの彼氏がいる。そのボクサーはサイファーが親善試合でコテンパンにやられた相手だった!しかも、最近ダンダオはマンとも仲がいい!どうすればダンダオの気持ちを振り向かせることができるのか!?サイファーは焦る!
サイファーを演じているのは、韓国ドラマに出てきそうなルックスのミーン・ピーラウィット・アッタチットサターポーン(Mean Phiravich Attachitsataporn)。タイBLドラマ「ラブ・バイ・チャンス / Love By Chance」(2018年)、「ラブ・バイ・チャンス2 / A Chance to Love」(2020年)に出演しています。肌が白い!
強くなりたい!
ボクシングがテーマなだけあって、「強くなりたい」というマンのまっすぐな言葉が劇中に何度も響いてきます。父親の背中を追いかけるも、上を目指すのは厳しい世界。本業は大学生だし、やることはたくさんあるし、練習は大変だし、あっちでもこっちでもチンピラに絡まれるし…。
ある日、マンの父ワンチャイは、サイファーがボクシングをする姿を見て、何かを思い出したようにリング上で指導をはじめた。酒に溺れる父は、息子のマンにも指導したことがなかった。その姿を見たマンは複雑な思いで、父ワンチャイには自分のことを見てほしい、そのためにはいつか絶対にサイファーに勝つと心に決める。
マンとサイファーの親友であり、ライバルでありというストーリーは、とても前向きでとことん爽やか。しかし、そんな2人の関係はボクシングの世界だけでなく、キャンパスでの恋愛模様にも!加えて、見え隠れする父親同士の過去が今後どんな展開を見せるのでしょうか…。
ライト級チャンピオンへの道
強くなりたいと願うのはサイファーも同じ。ボクシングを始めてからメキメキと才能を伸ばし、ライト級チャンピオン大会にもエントリーすることに。これに刺激を受けたマンも大会に向けて練習を強化していく。
そして、迎えた初めての大会。マンもサイファーも初めてちゃんとした試合でリングに。初戦では途中苦戦するも、相手を下した2人。
ガードが甘いな。初めての大会はうまくいかない。2人ともよく頑張った。
いつも酔っ払ってばかりの父ワンチャイが息子マンにこうねぎらいの言葉をかけた。マンは父親が初めてボクシングをする自分の姿を見てくれたと感じて嬉しかった。
このシーンで見せるマンの演技が100点満点!とってもいい表情をしています!お見逃しなく。
ボクサーになりたい
初めての試合で意気揚々としたサイファー。しかし、息子サイファーの活躍をニュースで見てしまった父親アルンは激怒する。「ボクシングは禁止」の言いつけを破ったからだった。どうしてそこまでボクシングを嫌厭するのかわからないサイファーは、「ボクサーになりたい」と父に打ち明ける。しかし、父親はまったく聞く耳を持たない…。
それどころか、サイファーがこのままボクシングを続けるというのなら、長年スポンサーとして支援を続けているワンチャイ・ジムを閉鎖するとまで…。
その後も父親の締めつけは続き、ついにサイファーのボクシング用品まで取り上げられてしまう始末。「人の物を勝手に捨てるな」というサイファーに「お前の物は私の物だ」と吐き捨てる父親。そう、贅沢で自由な暮らしは全て父親が与えたもの。そこが御曹司の辛いところでもあります。
頭にきた勢いでサイファーは家と車の鍵を置いて家を出ますが…父親の「ボクシング禁止」の意図はいったいどこに?
ところで、ストーリーから話が逸れますが、ドラマの中でバンコクのBTSアソーク駅の近くにあるデパート ターミナル21(TERMINAL 21)がよく出てきます。このデパート、フロアごとに外国の人気の都市がテーマになっていて、見て歩くだけでもすごく楽しい場所です。最上階には巨大なフードコートもあります。
サイファー突然の交通事故
ライト級チャンピオンに向けて、トーナメントを駆け上がっていくサイファーとマン。いよいよ次は準決勝で、2人が戦うところまできた。しかし…そんな矢先、思いもよらない事故が起きてしまう。
サイファーが車にはねられ、意識不明の重体に。すぐに病院に搬送されるも、サイファーの血液型は非常に稀少なB型RHマイナス。輸血が必要な状況にもかかわらず、適合する血液がない。
病院に駆けつけたファイファーの家族と、事故現場に居合わせたマンの家族、ダンダオ。家族の血液型も輸血には適さないことがわかり、B型RHマイナスの血液の持ち主をみなで一斉に探すが…。
そんななか、マンの父親ワンチャイが静かに声を上げる。「俺の血液を使ってくれ」ーー。
すり替えられた2人の人生
サイファーのB型RHマイナスの血液型をめぐり、病院でワンチャイが静かに打ち明ける。実は「サイファーは自分の息子だ」と。偶然にも同じ時期に生まれたサイファーとマン。当時、貧しいボクサーだったワンチャイは息子の将来のため、経済的に裕福なアルンの息子とすり替えた。
数十年前、ボクサーだったワンチャイは、スポンサーについていたアルンの指示で、わざと試合に負けた。いわゆる八百長だった。すでに大きな賭け金を集めていたアルンは、負ければジムのオーナーにしてやると持ちかけた。どうしても家族を養わなければならなかったワンチャイは、アルンの話を飲んだ。そして、サイファーとマンをすり替えた…。
サイファーとマンの関係には何か裏があると思っていたし、父親同士の確執も八百長以上のものがあると思ってはいましたが、「赤ちゃんのすり替え」とはまた難しい問題…。これで2人の人生が大きく狂いだしてしまいます…。
サイファーはワンチャイの輸血もあり、一命を取り留めますが、退院した後も大きく変わってしまった自分の人生をなかなかすぐには受け入れられず…。そりゃそう、そんなに簡単に心の準備ができるわけがないんです…。
マンはマンで、「サイファーに勝ちたい」とボクシングを続けてきたので、戦う理由を失った今、これ以上ボクシングを続ける意味を見出せなくなってしまいます。とても切ない…。
突然の状況の変化に耐えられず、家を出たマンが久しぶりにジムに戻ると、そこには父ワンチャイの姿が。申し訳ないと謝るワンチャイは、背を向けるマンに「問題から逃げるな」と、リングに上がるように言う。ワンチャイは「俺が憎くないのか」と挑発、一方のマンは殴られても殴られても父に立ち向かっていく。
憎みたい。それなのにどうしても憎めない。やっぱり親父が大好きだ。
涙目になりながら、自分の人生を狂わせた父親にこう伝えるマン。「ありがとう、息子よ」と返すワンチャイ。そう、今のマンには時間が必要なだけ。問題から逃げているわけじゃない…。
一番大切に思う人
親子の絆ってなんだろう。血のつながりはもちろんだけど、きっとそれだけじゃない。
君は友達と家族を大切にするそうだね。特に父親思いで、人がお父さんを悪く言うのを許さないとか。お父さんにとって、自慢の息子だろうね。
チャンスを与えられたり、許しを得たりすることがある。すばらしいことだ。
君のことを一番愛している人は誰だ?
そして君が一番大切に思う人は?
お父さんを許して、自分を許すんだ。そうすればきっと絶好の機会が訪れる。
君のお父さんもチャンスを待っているよ。
寮で鉢合わせたマンの友達ポップのお父さんの言葉。マンはこの話を聞いて、自分がとるべき行動がなんなのかわかった。自分が大切に思う人が誰なのかわかった。問題から逃げなかった。
マンにはほかにも大切に思う人がいる。ダンダオも次第にマンが好きな自分に気が付く。ダンダオはサイファーの片想いの相手。それでもマンとサイファーの絆はそんなことで崩れてしまうほど弱いものではなかった。こうして、マンは少しずつ成長し、強くなっていく…。
マンとワンチャイ:親子の王者決定戦
そんななか迎えたアマチュアボクシング大会の王者決定戦。サイファーとの不戦勝で決勝に進んだマンの対戦相手はダンダオの双子の兄カウィン。マンは育ての父ワンチャイに「ボクサーの親父にずっと憧れてきた。実の息子ではないけど、世界王者に育てらた俺が勝つ」と決意を記した手紙を残し、ひとり会場に。
そして、控え室で出番を待つマンのもとにやってきたのは父親のワンチャイ。なんと、コーチ変更の届出を出し、マンとともにリングに立つことを決めていた。だが、マンとサイファーのすり替えスキャンダルが解説者にアナウンスされ、さらには八百長疑惑の元世界王者ワンチャイがコーチとして登場し、微妙な雰囲気に包まれる会場…。
覚えておけ。何があっても、俺がいる。声援が止まれば、取り戻せばいい。お前は男(マン)だ。俺の子だからな。
決勝戦はすでにマンだけの試合ではなくなっていた。一緒にリングに立つ父ワンチャイのボクシング人生、同じ複雑な人生を歩むことになったサイファー、応援してくれるダンダオや仲間たち、みなの試合になっていた。
そして迎えた最終ラウンド。
深呼吸しろ。恐るな、その調子だ。集中しろ。一つだけ、約束しろ。すべてを忘れて、試合を思い切り楽しめ。いいか、楽しむんだぞ。わかったな?
育ての父ワンチャイの言葉を信じ、力を出し切ったマンに待っていたのは、勝利だった!
HOOK OST「Three Man Down」
さて最後にこのドラマの主題歌「Three Man Down」をチェック!最初はなんだか大げさに聞こえたこの歌も、エピソードが進むにつれてリングに立とうと直向きに頑張るサイファーとマンの応援歌のようにも聞こえてきます。
ストーリーの始まりはサイファーとマンの友情がメインでしたが、そこから親子の絆、家族の意味へとフォーカスが広がっていき、同時進行で展開していくダンダオをめぐるサイファーとマンの恋愛が、ドラマに華を添えるというとてもよくできた仕上がりに。そして何よりマン役のピークの演技がとてもイイ!
こんなにいいドラマならもっと早くチェックしておくべきだった!と思ったくらい、タイドラマ「Hook / 青春はヘビーパンチ」(2020年)はとてもおすすめの作品です。
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