おすすめ度：★★★☆☆ 呪いの悪魔ガスーが次々と村人を襲うホラー映画
Netflixでタイ映画「呪いのキス 哀しき少女の恋 / Krasue: Inhuman Kiss」（2019年）を観ました！友達と森でかくれんぼをしていた少女サイが、古い民家の2階で呪いの箱を見つけてしまったことから始まる悲劇的ホラー。サイの体には悪魔が入り込み、次々と異変が。夜な夜な村人や家畜が傷つけられる事件が起こり、悪魔ガスーの仕業だと盗賊と村人らによる悪魔退治が始まる。悪魔が登場するエグいシーンと、悲しい恋物語が交差する切ないストーリー。
幼なじみのサイ、ノイ、ジャッド
主人公のサイは、同じ村に住む青年ジャッドと幼なじみ。時代は太平洋戦争中。村にある診療所で、医師と看護師の手伝いをしている。サイに片想いしているジャッドは、いつもサイのことを気にかけ、サイを守るために一緒にいたかった。もうひとりの幼なじみノイはバンコクの大学で医学部に入学したが、空襲で両親を亡くし、戦火を逃れて村に戻ってきていた。
ノイはバンコクから村へと戻る道中で、女性の悪魔ガスーを退治するために村々を回っている一行と合流していた。そこから、サイの村での悪魔退治へ。それまでは何事もない静かな村だったにもかかわらず、家畜の内蔵が食われたり、赤ん坊が奪われたり、次々と不穏なことが起こり始める…。
女性の悪魔ガスー
タイの黒魔術と関係があるという女性の悪魔ガスーは、生首が体から分離した状態で内蔵をぶら下げて浮遊し、人々や家畜などを襲っては血と内蔵をむさぼり食う恐ろしい存在。いわゆる「お化け」や「妖怪」のようなもので、タイなど東南アジアに伝わる民間伝承だそうです（オカモトラボさんのブログ記事「『お化けのガスー』について調べてみた」参照）。タイでは今でも目撃情報があるような身近なお化けみたいで、美しい女性の姿をしていることが多いんだとか。とってもおもしろい！
映画では、サイが悪魔ガスーに変身する姿を目撃してしまったノイが、衝撃のあまりお寺に駆け込み、そこでお坊さんにガスーの話を聞くシーンがありました。ガスーは女性のお化けですが、男性のお化けのガバンも存在するそうで、ガスーとガバンは夫婦のお化けだったそうです。それがある日、ガスーが人間の男を好きになり駆け落ちしてしまったことに腹を立てたガバンがガスーを襲う、みたいな言い伝えで、それがこのストーリーの原点みたいです。
君は大丈夫、僕が治すから
結論から言うと、この映画、単に「ホラー」というよりかは「ロマンティック・ホラー」といったほうが正しいようなそんなストーリー展開で、タイトルと上述のガスーの伝承にもあるとおり、悲しく複雑なお化けの恋愛を描いた作品なんです。
ガスーと化してしまったサイは、そのことを誰にも知られまいとするのですが、ある夜村で牛の内蔵を食べているところを友達のジャッドに目撃されてしまうし、想いをよせるノイとはせっかく両思いになれたと思ったのに、ノイが連れてきたガスー狩りの男たちの標的になり、最後は映画の上映会でガスーが現れてしまい、騒動の末に撃ち殺されてしまう…。
「君は大丈夫。僕が治すから」と、医者を志しているノイは泣きながらドロドロになったサイの体を運び、最後までサイを助けようとします。そんなノイの姿を見たサイの生首（ガスーになって浮遊している）は、哀しい涙を流しながらノイに優しくキスをする…まさに人間の男に恋をしてしまったガスーの民間伝承を描いた悲恋なんですね。
もともと幼なじみだったサイ、ノイ、ジャッドの３人。「戦争が終わったらバンコクへ行こう。僕が案内する」というノイ。サイがノイとジャッドの手をとり、ゆびきりげんまんの約束をするも、その約束は果たせなかった…。
時代背景となっている戦争のシーンは特に出てはきませんが、人為的に人が死ぬ（殺される）のと、悪魔の呪い、お化けの存在で人が襲われ、お化けも退治される様子が、なんとも絶妙な対比になっているようにも思えます。
あわせて観たい作品
ちなみに、ノイ役を演じているオープ・オープニティ・ウィワタナワラーン（Oab Oabnithi Wiwattanawarang）が、この映画では一人ずば抜けてめちゃくちゃ光ってます！オープくんは大人気のタイBLドラマ「I Promised You The Moon / 僕の愛を君の心で訳して」（2022年）で、チャイ先輩を演じていました。その時もオープくんの表現力の高さは抜群だと感じましたが、この映画はその３年前に撮影されていることもあり、まだどこかあどけなさの残るオープくんのその後の才能を感じる映像が山ほど見られます！気になった方はぜひ両方観てみましょう！
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