★★☆☆☆ 出会うことの尊さを教えてくれるドラマ
U-NEXTでJINLOEのタイドラマ「What The Duck: FINAL CALL / ホワット・ザ・ダック:ファイナル・コール」(2019年)を見ました!「What The Duck / ホワット・ザ・ダック」(2018年)の続編シリーズで、CAの採用試験に合格したポップと、ポップのことが好きでたまらないケータリング会社の同僚オートのその後が描かれているドラマ作品。新型コロナウイルスの世界的流行初期のタイミングで制作に影響を受けたのか、全8話と中途半端に短く、ストーリー展開もおかしい…。
前作シリーズの続き
このドラマシリーズは前作「What The Duck / ホワット・ザ・ダック」の続きになっているので、基本的にはこのシリーズを見ていないとシナリオがまったく理解できない作りになっています。登場人物もこじれた関係性もすべて前作からの続きです。
消えたオートの謎
ファイナル・コールでは、前作の明るく楽しく、アヒルだらけのキュートすぎるコメディとは打って変わって、もの悲しく、どうしようもない焦りと後悔が渦巻く大人のドラマっぽくなっていきます。そのため、視聴者としてはどことなく違和感が…。シナリオのトーンが、悪い意味で予想とは全く違うものになっています。
全8話と短い中での一番のハイライトはなんと言ってもオートの失踪。ある日突然ケータリングの会社を辞めて、ポップの前から姿を消してしまう。ポップはオートの住んでいたアパートやアユタヤの実家を訪れますが見つからず。
最後は、オートが育ったお寺でようやく見つけることができましたが、「死んだお母さんのために出家する」という言葉にショックを受けるポップ。それでもオートのために出家の儀式をして送り出そうとします。
将来へ向けた「大人の選択」
ファイナル・コールの大きなテーマはおそらく「大人の選択」。ただ楽しいだけじゃなく、ただ好きなだけじゃなく、将来のために何が一番大事か、どうすることが愛する人のためなのか、そんなもう少し深く大きな大人としての選択をする時が、ポップとオートにやってきます。
CAの採用試験に合格したポップは、オートをカオヤイ旅行へと誘い、そこでCAになる夢を叶えるためにケータリング会社を辞めるつもりだということを何度も言いかけますが、落ち込むオートを思うとはっきり言うことができず、どんどんドツボにハマっていきます。そんななか聞くことになったオートの出家宣言。
オートがなぜ突然会社を辞め、出家する覚悟を決めたかと言うと、ポップがせっかくCAの採用試験に合格したのに「オートのためにその夢を諦めようとしている」とプリーに聞いたから。愛する人が夢を叶えようとしているその時に、自分が足枷になってはいけないと、ポップの前から姿を消したのでした。
タイムカプセル
それでもオートはポップのことを忘れた訳じゃない。お寺での剃髪式(出家する時に髪の毛を剃る儀式)で、オートが泣きながらポップの耳元でささやく。
たとえ俺たちが違う場所にいても、俺が出家してお前がCAになっても、お前への愛はずっと変わらない。どんなに時間が経っても忘れないで。まだ一緒にやることがある。俺たちのタイムカプセル、まだ開けてないだろ。一緒に開ける日まで俺を待ってて。
人生で最愛の人に出会うって、こんなにも尊いものなのか…。母親と死別し、父親に捨てられ、誰にも愛されず、孤独な子ども時代をお寺で過ごしたオートは、「幸せ」とは何かを知るために俗世間に出た。そこで出会ったポップ。オートは隣にポップがいないことに耐えられず、再び俗世間を捨て、お寺に戻った。
ポップとオートが池のほとりで木の下に埋めたタイムカプセルには何が入っていたんだろう。あのクッキーの缶はオートが考えた2人の「将来」。お互いに贈りたいものを入れて、10年後に一緒に開けると誓った。その時がくるまで、ポップはCAの夢を叶え、オートは仏門に。きっと2人は大丈夫。どんなに離れていても、時間が経っても、忘れない。なぜなら、まだ一緒にやることがあるから…。
ニックとモー
ファイナル・コールで唯一いい方向へと進んでいくのがニックとモー。ポップとの失恋をなかなか乗り越えられずにいたモーが、CAデビューの初日に出会ったパイロットのニックと少しずついい感じになっていき、最後は夜空を飛行中の機内で超ロマンチックな瞬間を!
プリーとランボー
一方で、相変わらずどうしようもないのがプリーとランボー。というか、ランボーがダメ男すぎる…。プリーに振られて傷心のランボーは寂しさを紛らわせるために、男遊びとドラッグもやるようになり、どんどん深みにはまっていく。
しかも、プリーをポップに取られたと勘違いし、ポップを好きなオートを陥れようとする始末。前シリーズではとてもカワイイ正確だと思ったけど、いつの間にかただのダメ男に…。プリーもプリーで強情ですが、どうしようもないランボーよりかはマシ。ポップからの電話でオートの出家式に呼ばれたプリーとランボー。
ポップに「お互いのこれまでを許しあって」と言われたけど、2人とも指輪は外したまま。最終回でもお互いを許したシーンはありませんでした。ちょっと残念。
未解決の謎
ファイナル・コールではこのほかに、ウェイ(トン)とマイという施設で育った2人のBLも伏線で描かれているのですが、そのストーリーが中途半端すぎて一体何がなんなのかわからない!と思いましたが、これはコロナ禍で制作過程に影響が出たとかそういうことなんでしょうか?でもタイ国内での放送は2019年なので、タイミングはずれているような…。でもコロナじゃないなら、何?
しかもウェイを施設から引き取って育てたのはなんとランボーのお父さん。そして、ウェイは「あの人はただ自分の望む相手と結婚させたいだけ」、ってそれランボーとベルのケースと一緒じゃ…。でも…ということは、ランボーとウェイは義理の兄弟?(プリーとモーは兄妹でした)
そもそもお父さんは何者?ランボーの婚約者として連れてきたベルはミャンマー人で、2つ目の国籍が欲しい、と言っていましたが、もしかして偽装結婚を斡旋して国籍取得を手配する闇の仕事でもしているんでしょうか?ここには何の説明もないまま、オートの出家でシリーズは終了。ちょっと消化不良です…。
というわけで、JINLOEのタイドラマ「What The Duck: FINAL CALL / ホワット・ザ・ダック:ファイナル・コール」(2019年)は、ちょっとおかしな展開に戸惑ってしまう内容です…。
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