おすすめ度:★★★☆☆ 家族のカタチについて考えさせられる作品
Netflixでタイ映画「Fathers / 父ふたり」(2016年)を観ました!最初の印象は「新しい家族のカタチ」を描いた幸せいっぱいの映画のように感じましたが、見進めていくうちに、とても複雑で難しい問題を「子育て」のアングルで描くとっても社会派の映画に。人権とは何か、幸せとは何か、苦悩と悲しみを通じて考えさせられる作品。
同性婚・同性パートナーシップ制度
日本でもLGBTQ法案などがそれなりに議論されるようになり、同性婚・同性パートナーシップ制度が「法の下の権利」として扱われるようになってきました。
法律や制度は大変だとしても作れば済む問題かもしれませんが、同性カップルにとっての「子どもが欲しい」という願いを叶えるのはもっと複雑で困難。この映画は、そんな正解も間違いもない問題に光を当てています。
BLが当たり前の世界
タイドラマが好きな人にとってはBL(ボーイズラブ)はもはや当たり前。GMMTVなどの大人気タイBLドラマシリーズを見ていれば、BLも男女の恋愛もなんら違いはないし、むしろなぜBLがダメなのかもわからない。
それより何より、そういった「BLが当たり前の世界」を描いたドラマの中では、どの主人公たちも誰に悪びれることなく正々堂々と恋愛し、生きている。
家族や友だち、通りすがりの人までもがそれをごく普通のこととして受け入れ、認め、尊重している。それがこの世界のあるべき姿だとも思う。
でも現実の世界はどうだろうか?
数十年前、数百年前の世界と比べたら、きっとそれなりに変化のある時代にきたんだと思うけど、だからといってBLが当たり前の世界かといえばそうではない。
そもそもBLをBLとして扱う時点で、平等じゃない。これは、心身に障害がある人を「障がい者」として括って「別枠」で扱うのとどこか似てる。みんな同じ人間なのに。
子どもには父親と母親の両方が必要なのか
子どもを持つとか、子どもを育てるとなった場合、「親になる資格」のようなものはあるのだろうか?
おそらく究極的にはそんなものはないのだろうけど、それでもこの人間社会ではきっと「それっぽいもの」はあるに違いない。
それがきっと「世間体」とか「他人の目」で評価されるような得体の知れない「社会規範」なんだと思う。
当たり前のように「母の日」と「父の日」があるのと同じ。誰も不思議に思いもしない。それはそれでダメではないのだけれど、ジェンダーに関わりなく「親の日」がもっと意識されてもいい。
同性婚や同性パートナーシップ制度で認められたカップルに育つ子どもは、男女間の夫婦に育つ子どもよりも劣ったり、恵まれなかったり、不幸だったりするのだろうか?
同性カップルが子どもが欲しいと望むのは、身勝手なことなのだろうか?
養子縁組
同性カップルが子どもを持つ場合、養子縁組がひとつの選択肢になる。これがまた状況をさらに複雑にする。
自分ひとりで決めて進んでいけない子どもだからこその問題ではあるけれど、育つ環境は人ひとりの人生を左右するものであるだけに、本当に難しい。
この映画の主人公のふたりのお父さん「ダディ」と「パピー」は、養子として迎え入れ、我が子のように愛し育ててきた息子との親子関係を、ある意味で社会に否定され、苦悩する。
そして、2人で築き上げた新しい家族のカタチは崩れていき、生きることに苦悶する。
愛は愛。
家族は家族。
そんな当たり前のことが無条件で許される「寛容な世界」が早く実現してほしい。「Fathers / 父ふたり」は、そんなことを深く考えさせられる映画。心にドシンと重いものがのしかかってきます。
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