タイ映画「HUNGER / ハンガー 飽くなき食への道」(2023年)Netflix キャストとあらすじ

おすすめ度:★★★☆☆ 人は何のために食べるのか、特別な料理について考えさせられる作品


Netflixでタイ映画「HUNGER / ハンガー 飽くなき食への道」(2023年)を観ました!料理の世界でプロの道を追求する2人のシェフのお仕事系人間ドラマ。タイの高級料理店「HUNGER」で奇才を放つ天才シェフ・ポールと、料理の才能に長けた大衆食堂の娘オエイが、それぞれ描く究極の食のカタチとは。「特別な存在になりたい」と願っていたオエイが最後に辿り着いたのは…。


食べる人を特別な存在にする料理

バンコクの下町にある実家が経営する大衆食堂「シューヨウ」で料理人として毎日汗を流していたオエイは、ある日、客として料理を食べに来ていた高級レストラン「HUNGER」のジュニア・スーシェフのトンの目に留まり、店に来ないかと声をかけられる。


変わり映えのしない毎日に退屈さと疲れを感じていたオエイは、ネットでHUNGERの天才シェフ・ポールの出す料理の口コミを見て興味を持ち、とりあえず入門テストを受けることに。ここからオエイの人生が大きく変わり始める。


高層ビルの上階にあるHUNGERの厨房で、カオパット(チャーハン)を作るように言われたオエイ。冷飯を使い、大胆な火捌きでシンプルな玉子炒飯を作ったオエイは、天才シェフ・ポールに「火は使えるか」と聞かれ、「使える」と答える。志望動機を聞かれ、「特別な存在になりたい」と答える。ポールはHUNGERで「食べる人を特別な存在にする」料理を追求していた。オエイはシェフの要求に従順に応えた。


すぐに将軍主催のパーティで肉を焼く担当をまかされたオエイは、シェフに言われるがまま、高級な牛肉を切り、焼こうとするが…切っても切ってもそれではダメだと怒鳴られ、焼いても焼いてもそんなものは料理ではないと罵声を浴びせられる…。あえて現代日本風に言うなら「パワハラ」でしかないのだけれど、肉が焼けない自分に苛立つオエイは「逆ギレ」し、徹夜で肉を焼く。跳ねた油で腕はヤケドだらけに。怖い…怖すぎる。


主役のオエイを演じているのはオークベーブ・チュティモン・ジョンジャルーンスックジン(Aokbab Chutimon Chuengcharoensukying)。国際配信されているNetflixのタイ映画では割と常連で、「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(2017年)、「ハッピー・オールド・イヤー / Happy Old Year」(2019年)にも出演しています。


特別な料理が満たすもの

将軍主催のパーティで、招待客の前で見事に高級肉を焼いてみせたオエイ。肉は「血みどろ」の盛り付けとともに招待客に振る舞われた。シェフの狙いは、軍の権力者とその周囲に群がる人々の「支配欲求」を満たす料理を提供することだった。


招待客らは「血みどろ」になりながら、オエイの焼いた高級肉に食らいつく…このシーン、なんともグロテスクで気分が悪くなりそうになるのですが、オエイは逆にシェフの類稀な料理のセンスにおもしろさを感じ、静かに微笑む…。


肉を焼いたことで自信がついたオエイは、少しずつHUNGERでの仕事にのめり込んでいく。しかし、シェフはそんなオエイに「肉を焼く以外に何もできない」とそっけなかった。そう、プロの世界は厳しい。一度や二度の成功体験で、さらに進んでいけるほど甘くない…。


オエイが望んだ次の仕事は、暗号資産で大儲けした若者たちのプールパーティでのケータリング。料理の味などわからぬ若者たちに高級料理を振る舞うシェフとチームに、複雑な思いだった…。


最後の晩餐

次にオエイがスーシェフを任されたのが、小さな家に住む3人家族のケータリング。セレブのパーティに次ぐ仕事は、なんと普通の住宅街の小さな家。特別な日なのか、お姫様ドレスを着た少女と、心痛な面持ちの両親が、小さなテーブルを囲んでいた。


少女が「いつおうちに帰れるの?」と聞くと、父親は「もうすぐだよ。今はリフォーム中だから、終わったら前よりもっと大きな家に住めるからね」という。この言葉とは裏腹に、父親の表情は固く緊張し、母親は悲痛な表情に涙を浮かべている…。


もしかして…この家族にとってはこれが「最後の晩餐」になるんじゃないか…と思わずにはいられない状況で、その予感はのちに的中してしまう。建設会社トップの父親は事業に失敗し、多額の借金を抱え、HUNGERの食事を最後に一家心中を図るのだった…。恐ろしすぎる…。


料理は人々の人生を華やかに彩る。その命が尽きる最後の瞬間まで…。


コンソメスープ事件

そんななか勃発したコンソメスープ事件。トンが家族3人に運ぼうとした高級スープを最終チェックしたシェフは急に激怒し、スープをすべて捨ててしまう。しかもあろうことか、キッチンにあったインスタントラーメンで即席コンソメスープをつくり、家族に提供する…。


問題は味ではなかった。少女は甲殻類アレルギーのため、エビを食材に使うことはできなかったにもかかわらず、スープにはエビが入っていた。それは、横暴なシェフのやり方にうんざりした年配のジュニアスーシェフが、シェフを陥れるためにエビを入れていた…(タイドラマでは結構、この甲殻類アレルギー問題がよく出てきます。海鮮食材を多く使うタイ料理で、ひどい場合は口に入れただけで命を落とすこともあるそうです)。


おいしいかどうか以前に、その料理が食べる人にとって安全かどうか、シェフにとってはまずそこが問題だった…。責任を問い、年配シェフを追い詰めるシェフ。そこでなんと!シェフは近くにあったナイフで脇腹を刺されてしまう…。HUNGERでの料理はもう命がけ…!


おいしい料理の「復讐」

貧しい家に生まれたシェフは子どもの頃、母親が住み込みで家政婦として働くお金持ちの家で、とても悲惨な経験をしていた。高級食材のキャビアをおいしそうに食べる家族をみて、ある夜、冷蔵庫にあったキャビアを盗み食いしようとした。しかし、その家の年の近い息子に見つかってしまい、シェフは泥棒扱いされ、母親は何ヶ月もかけて代金を弁償させられた。


床に落ちて割れたキャビアの瓶。その片付けを命じられながら口にしたキャビアの味は「クソまずかった」。このトラウマがシェフの食の原点に。HUNGERで「特別な料理」を提供することはある意味、権力者や金持ちたちに「復讐」することでもあった…。


「料理」は毎日食べるもの。高級であれ庶民的であれ、おいしいものはおいしいし、おいしくないものはおいしくない。でも、そんな料理が、政治やビジネスの道具に使われているのも事実だし、社会階層のように超えたくても簡単に超えられない大きな壁を孕んでいるもの事実。高級だからおいしいわけでもないし、安いからマズイわけでもない。料理は人間社会と同じ。複雑で、とことん闇が深い…。


シェフは独裁者

投資家に気に入られたオエイは、新しい創作料理ストラン「FLAME」をオープン。天才シェフ・ポールから独立したことで、HUNGERとはライバル関係になってしまった。スーシェフからシェフの立場になったオエイは、恋心を抱くトンに「一緒に働かないか」と声をかけるものの、「君の下で働きたくない」と断られてしまう。


その時、トンに言われたのが、「厨房に民主主義はない。シェフは常に独裁者だ」という言葉。この言葉を聞いたオエイは、何かがプツンと切れたように、自分のレストランで、天才シェフ・ポールのような独裁者になっていく…。この映画、いたってシリアスで笑えるポイントはどこにもないのですが、オエイが天才シェフ・ポールを真似て、スーシェフに「肉が厚い」だのと怒鳴り散らすシーンは、皮肉の効いたジョークのようでちょっと笑えます!


人々が食べたいものは

天才シェフ・ポール率いるHUNGERとオエイのFLAMEはある日、一流セレブのパーティーに呼ばれ、料理を提供することに。HUNGERが派手な演出で血の滴るような肉料理を出す一方で、オエイは「駄々っ子面」というおばあちゃんの手料理を再現。誰もが懐かしさを感じる味だった。そこにHUNGERはさらに二品目の特性スープで挑戦をしかけてきた…。


見たこともないすごい料理とどこにでもある素朴な料理。本当に人々が食べたいもの、食べておいしいと思うものは、一体どっちなんだろうか…?


そんなことを考えているうちに、事態は思わぬ方向へ!天才シェフ・ポールが、軍幹部のために捕獲が禁じられているサイチョウを勝手に捕まえて料理する動画がリークされ、警察に逮捕されてしまった。しかも、その動画をリークしたのは、独立後、店の経営が思うようにいっていないトンだった。傾きかけた店に出資を得るために、HUNGERを潰したい投資家の要求を受け入れていた…。


何のために食べるのか

実家の大衆食堂「シューヨウ」での「料理」から出発したオエイは、毎日毎日何のために中華鍋を振っているのか疑問に感じ、店を出た。HUNGERでは「高級な料理」や「特別な料理」に苦悩し、FLAMEでは「優れた料理」や「個性的な料理」に苦しんだ。思いを寄せていたトンは、他店を「陥れる」ことで自分の料理を守ろうとした。そんな姿にもうんざりだった。


人は何のために食べるのか。自分はなんのために料理するのか。


簡単そうで難しいこの問いに、唯一の答えを出してくれたのは、大衆食堂「シューヨウ」にいる家族と友人、お客さんたちだった。


「お腹は?」「空いた!」ーー。人はお腹が空いたから食べる。みんなで食べるからおいしいし、みんなで食べるから楽しい。飽くなき食の追求の末、オエイが最後に辿り着いたのは、自分がもといた場所だった。当たり前の日常にある料理こそが、一番尊いものだった…。





この映画、実は2回観て初めて全体的な作品の完成度の高さに気づきました。1回目はただただグロいところばかりが目について、あまりいい映画だと感じなかったんですが、2回目に観た時には、オエイの「料理」に対する心情の変化が、非常に繊細に描かれていることに気づきました。


「料理」であり「食べること」がこの作品のテーマでありながら、何がおいしいかとか、どの食材がいいとか、そういう視点では描かれておらず、あくまでお仕事ドラマであり、人間ドラマ。最後の最後で、静かな感動に襲われる作品です。




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