タイBLドラマ「KinnPorsche The Series / キンポルシェ」(2022年)おすすめ キャストとあらすじ

おすすめ度:★★★★☆ 大人向けのハードボイルドなアクションBLドラマ!


タイの大人気BLドラマ「KinnPorsche The Series / キンポルシェ」(2022年)を観ました!「キンポルシェ」なのか「キンポーシュ」なのか日本語訳が分かれつつも、ファンに「キンポル」と略称で呼ばれるこの作品は、とにかくこれまでのタイBLで見たことがないテイストが最強!マフィアの抗争とBLを掛け合わせたなんとも革新的なストーリーで、本格的なアクションとバイオレンスシーンが満載なのにコメディで切ない。テンポ感のある映像が最高にカッコいい。しかもエロい(※R15)!泰流ファンなら絶対に見るべきタイBLドラマ!


マフィアの息子とボディガード

このドラマは、マフィアの息子キンと、バーテンダーでその後ボディガードとなるポルシェが出会うところから物語がスタート。幼い頃に両親を交通事故で亡くした兄弟ポルシェとポーシェーの家に、マフィアが借金の取り立てにやってくるため、大学生のポルシェはバーテンダーとして働いたり、賭博が行われる格闘に出場したりしながら、なんとか日銭を稼ぐ毎日。


そこにある日、命を狙われていたキンとの出会いがやってきます。成り行きでキンの命を助けることになったポルシェは、お礼にキンの高級腕時計をせびり、それで叔父さんに借金の支払いに充ててもらおうとしたにもかかわらず、叔父さんはギャンブル中毒で腕時計を売って得たお金をすべて賭けに注ぎ込んでしまうという、情けない状況に。なので結局、借金地獄からは抜け出せず。そんな中、キンにボディガードになれと言われ…


第1話の大半がこのキンとポルシェの出会いのエピソードですが、実はこの辺を見ただけでは別におもしろくもなんともなく、何を争っているのかさえもよくわからないアクションシーンが続くだけ…。ここで脱落しないように見続けていると、第2話に入るあたりからようやく色々と動き出す展開になっていきます。


実年齢と設定が近いキャスト

主人公の2人のうち、マフィア一家の次男キンを演じているのがマイル・パークプーム・ロムサイトーン(Mile Phakphum Ramsaithong)。もう一方のポルシェ役を、アポ・ナタウィン・ワッタナキティパット(Apo Nnattawin Wattanagitiphat)が演じています。


タイBLドラマ作品はメインキャストが二十歳前後くらいの学園ドラマ作品が多いなか、「キンポルシェ」は大人の世界をダークかつスタイリッシュに描いていて、実年齢的にもマイル&アポの組み合わせは最強。実年齢より若い役を演じることが多いタイBL作品のなかで、年相応の2人によるリアル感がズバ抜けています。


本家と分家:誰も信じることのできない世界

マフィアの世界の抗争がストーリーの前提にあり、マフィア一家の後取り息子のキンは常に誰かに命を狙われています。しかし、いろいろな抗争の中でも最もよくわからなかったのが、本家と分家の抗争。もちろん分家にとって本家は目の上のたんこぶなのは理解できますが、それでも兄弟関係にある本家と分家がなぜあれほどまで互いに傷つけ合うのか…。


その理由が最後にわかるといえばわかりますが、それも本家ゴーンと分家ガンの個人的な感情と事情によるもので、本家と分家の利害関係にまで影響するようなものなのか??と思ってしまうくらい浅い。その辺は脚本の限界なのかな…。


とはいえ、ハードボイルドなマフィアの世界の話なので、アクションシーンをふんだんに取り入れるにはなんであれ抗争に結びつけなければならない、というのはあるのかもしれません。だから、その意味で、その辺をあまり深く考える余地はないんだと思います。


誰もいない森で

誰も信じることのできない世界で、キンはボディガードのポルシェを信じることができるのか?がこのドラマの大きなポイントでもあると思いますが、そこは意外と簡単にクリアできてしまい、かなり早い段階からキンはポルシェを信頼するようになります。キンの元恋人タワン(実は分家が本家に送り込んだスパイ)の登場で一度は信頼関係にヒビが入りそうになりますが、それもそこまで大きなピンチにはなりませんでした。


個人的に最高だと思ったのが、キンとポルシェが何者かにトラックで誘拐された後、追手を逃れて森に逃げ込むシーン。その時、キンとポルシェが手錠で片手ずつ繋がれていたため、離れられないまま深い森をあてもないままどんどん進んでいき、迷い込んでしまいます。


手錠に繋がれたまま、森の中で飲み水を探したり、川で魚を捕まえたり、廃トラックで一緒に寝たり… 社会のしがらみから逃れて、誰もいない世界だと、あんなにも自由で素直になれるんだなぁと見てみて切なくなります。実際、この世はしがらみだらけ。マフィアの世界もカタギの世界も一緒。


本当は手錠なんて簡単に外せるのに、それでもポルシェと一緒にいるために手錠をつけたまま数日を過ごしたキン。最後にポルシェに「逃げろ」というシーンはジーン来ました。このドラマはどうみても「琴線に響く感動作」ではないので、この森のシーンはかなり貴重だと思います。


キンとポルシェは従兄弟なのか?

ストーリーが進むにつれて膨らむ疑問。それはキンとポルシェが従兄弟なのかということ。はじまりはとてもそんな状況ではないものの、キンの父親で本家のトップを務めるゴーンが、ポルシェの囲い込みにこだわったり、ポルシェと弟ポーシェーを自宅に住まわせたり…。「もしかしてポルシェの実の父親はゴーンさん??」とも思えるような行動が続きます。


最終的には、ポルシェの母親がゴーン(本家)とガン(分家)の妹だったことが判明し、ポルシェにとってゴーンは叔父さん、キンは従兄弟だったことがわかるわけなんですが、そこで「えー!!」とならないのがキンポルシェ。お母さんは養女だったので、血のつながりはないわけなんですね。この辺は韓ドラの人気作品からしっかりシナリオ作成のポイントを学んでいるようです。もしキンとポルシェが本物の従兄弟だったとしたら… 数々のエロいシーンにファンは引いてしまいますね!


ベガスがとにかくヤバい

キンとポルシェ以外のサブキャラの中で一番際立っているのが分家ガンの長男ベガス。このベガスがとにかくヤバい…。最初は普通だと思っていたら、タワンの登場あたりからどんどんヤバさが増していき、全編通して状況をみ出すのはすべてこのベガス。終盤に入り、分家に侵入したキンの優秀なボディガード(ポルシェのルームメイト)のピートを監禁するあたりはエグすぎて怖すぎて…見ていられません!


しかし、ピートもピート。本家に忠誠を誓い、分家に寝返るつもりはないのに、いつのまにかベガスに恋しちゃって、せっかくベガスの隙をついて監禁部屋から逃げるチャンスだったのに、ハリネズミが死んでかわいそうなベガスに寄り添ったり、また監禁部屋に自分から戻ったり…。ストックホルム症候群もいいところ。最後の最後は撃たれたベガスに「俺はお前のペットなんだから、面倒見てくれ」的なことまで言って、ちょっとこれはさすがに引いてします!


エリカが大活躍

ストーリーは最終回、本家と分家の血みどろの抗争でクライマックスを迎えますが、シナリオとはまったく関係ないところで、武器保管と担当しているおばさん「エリカ」(名前からして日本人?)の土壇場での大活躍が何ともいえません!「キンさん逃げて!」と叫び、突然両手の銃をぶっ放し、その後も逃げ道を探すキンとポルシェの後方支援を続け、最後には撃たれてしまう。女性がほとんど出てこないこのドラマで、エリカは一瞬ですが大活躍してくれています。そこも見どころのひとつ!



ポルシェの両親の事故死に隠された秘密

迫力あるアクションシーンと、ハードボイルドなのにおちゃめでかわいいキンとポルシェのストーリーに引き込まれる「キンポルシェ」。回が進むにつれて、ポルシェと本家一族との関わりに暗雲が立ち込め、両親が死亡した事故に一体どんな秘密が隠されているのか、緊張が走ります。


しかし!その結末は結構お粗末… 。本家のボス・ゴーンはあれもこれも、何度も何重にも嘘をついていて、「信じる」もなにもキンとポルシェに伝えていたことはそもそも事実じゃないし、毒殺されたはずのゴーン自身が実は生きていたし、死んだはずのポルシェのお母さん(ゴーンの義理の妹)は生きているし、ちょっとこれは…めちゃくちゃ…。はっきりいってやりすぎです…。


なのでやはり「キンポルシェ」はどう考えても感動作ではないので、人間ドラマの部分はアクションシーンを作り出すためだけの素地(設定)と理解して、見ていくのがよいと思います。ただ、その部分が薄いとBL作品としての深みがなかなかでないのも事実。ただ映像は紛れもなくカッコいいので、難しいことは考えずに、そこを思い切り楽しむ感じがいいのかな。


本家のボス・ゴーンが実は生きていたにもかかわらず、毒殺されたという情報が流れたことで本家と分家の抗争が起き、分家のガンを殺す結果となってしまいますが、それにより、ポルシェが分家のボスに就任。ゴーンの後継者として本家のボスに就任したキンとともに、一族を繁栄させていく、という終わり方に。


この展開に納得した人は多くないんじゃないかと思う反面、ゴーンがポルシェを抱き込むことにこだわったあたりから、見え隠れしていたシナリオではありました。ただ、タイでは人気シリーズは必ずと言っていいほど同じキャストで続編が作られるので、キンとポルシェの結末をこうすることで、続編ドラマへと伏線をつなげやすいのではないかと思います!なので、続編を待つ意味では最高の終わり方なのかもしれません。


というわけで、なかなかタイBLドラマでは見ないハードボイルドな作品「キンポルシェ」は、とてもおすすめのドラマです!




あわせて観たい作品

「マフィアとボディガードのBL」といえば、キンポルシェのほかにCH3のタイBLドラマ「GOLDEN BLOOD / ゴールデン・ブラッド」(2021年)があります。キンポルシェほどハードボイルドではありませんが、敵陣から命を狙われ続けるマフィアの坊ちゃんの命を、無口で真面目なボディガードが誠実に守るストーリー。

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